2007年8月25日土曜日

Innocent Boys

今夏の甲子園には結局、王子はやって来なかった。
最大の怪物が地区予選で姿を消したことで
巨頭対決の夢も画餅に帰してしまった。

あくまでハンカチ王子とマー君に湧いた昨年と較べた場合、
世間一般の関心からいえば、やや物足りない
「夏」だったと言えるのかも知れなかった。

「知れなかった」と過去形にしたのは、決勝戦終了後、
そこへ大きな爆弾が投下されたから。

準優勝に涙を飲んだ高校の監督が主審の判定に
公然と異を唱え、批判したのは前代未聞。

突如、その回だけ投手がコントロールを見出し、
満塁から四球で押し出し。

際どいコースの判定もあって、投じた一球は
満塁ホームランに帰結した。

ここで主審のコースの判定への批判、疑念が
登場するのである。

しかし、主催である翌日の朝日新聞はこのくだりを
全く無視。

二遊間のバックトスを駆使した高度な連携プレーを
大会総括で「メジャーの影響」と断じて釘を刺す
石頭には「あってはならない」事態だからである。

優勝した佐賀北高校は素晴らしい。
先発投手が163センチなのも素晴らしい。

野球留学者とは無縁の公立進学校なのも素晴らしい。
特待生問題とは無縁の清潔さがこの上なく素晴らしい。

いや、どこの学校だろうが、「日本最大の祭り」の
頂点に達した努力はやはり賞賛されるべきだ。

でも、しかし、こうして考えてみると、
西武ライオンズの背徳行為に端を発した
特待生や裏金にまつわる問題の嵐が吹き荒れた今年。

佐賀北高校の公立校としての久々の優勝は
甲子園の、そんなものがあるのか知らないが、
清潔神話を守ったのではないだろうか?

異性との交際はおろか、排便、排尿すらしないという
建前の昔のアイドルさながらに、甲子園は
清純派であり続けねばならない。

そんな頑迷さをビッグビジネスの礎にする輩は
結果的にワン・チャンスをものにした。

彼らが求めたのは佐賀北ではない。
欲したものは清純派のイメージだ。

だから、これは佐賀北の勝利をなんら蔑むものではない。
しかし、相手校の監督の職を賭しての言動は重い。

その一言はそれまでの自分たちの教育や言動、
建前の全てを否定するものだろう。
高校野球の精神や美学を無にするものだろう。

それだけに重みを感じざるを得ない。
あのWBCでアメリカ有利な判定のごり押しをした審判、
あの悪魔顔と名前がちらついてならない...。



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