「安心」にしがみついたその子は
こびり付いた洟を拭ってもらい、
幾分は滑らかな呼吸を取り戻したそうだ。
「温もり」と「安らぎ」に寄り添って
眠る夜は、どれほど至福の時だったろう。
二時半を過ぎる頃にメールで様子を知り、
それでも思いを遣り続け、朝を迎える。
もどかしく迎えた朝に送るメールは
相手の体調を慮るばかり。
恐くて「子猫」が打てない。
しかし、その家の子猫3匹の鳴き声に
小さく呼応するのを電話で聞くと
初めての安堵に出会えた。
実際は弱々しくなった呼吸のことは僕に
伏せられていて、その代わりの通院が。
僕は通院には反対だった。
プロによる所見、冷静の残酷が恐かったから。
そんな弱腰な僕の浅慮と元気さんの両目を
堅く塞ぐ目脂を医師は拭い去ってくれた。
そしてそのとき、元気さんは「母」の貌を
まだ新しい網膜に焼き付けたことだろう。
小さな躯に針を付きたて、水分の命を注入してもらった
その子は幾分の時間を稼いだ。
そして、その後、ゆっくりと、手足を少し動かすことで
その生を誇示しながら、やがて冷たくなっていった。
「母」には物音と香りで感謝と別れを告げていった。
呑気な僕は生活という雑事をこなしていたのに。
その夜、9時を過ぎて現実を知るメールが。
孤独な闇の中、冷たく辛い「死」を迎える代わりに
暖かな安らぎと光を、「母」を知って去ったあの子。
僕の胸にしがみつき、そして次には「母」の手に縋り、
必死で幸福を手繰り寄せようとしたあの子。
世の中は暗くて恐くて、寒くて冷たくて、
もう二度と生まれたくなんかない!
そんな絶望の代わりに、思いっきりの「死にたくない」、
生への執着をあの子に残せただろうか。
大小ないまぜにして一喜一憂をつむぎながら
大地は無表情に回る。
僕らの悲しみなど、取るに足らないものだ。
世界から見れば。
そして、あの子が味わったものに較べれば。
僅か24時間足らずの延命、そして小さな生への執着は
僕らのエゴ、自己満足だろうか。
あの子の苦痛を引き伸ばすだけの愚行、愚考だったか。
「死にたくない」を与えただけの残酷よりも
「また生まれたい」の希望を与えられたのだ。
ひたすらに自分たちに言い聞かせる。
念を押し、言い含めるために手放しで泣いた。
電話越しに泣いただけでは足りなくて、
一人になって思い切り泣いた。
僕よりも辛い思いをした「母」に、
彼女の傍で土に帰れるように願った。
寒くて、恐くて、孤独だった街よりも
愛と緑にくるまれた彼女の住む町の土に
帰れるように願った。
そしていつでも僕らの元に帰ってくるように願った。
生きて、在ること。
当たり前に繰り返す呼吸の一つ一つが
貴重な宝物であり、
幸福はそこに宿っているという「気付き」と
爪の先ほどの「親になる自覚」を
あの子から貰った。
元気だけ、与えられなくてごめん。
また、会いましょう☆
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